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タンポの話(ストロビンガーの改良)

 

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タンポの改良を語る上でデヴィッド・ストロビンガー(David Straubinger)の改良を話さないわけにはいかない。
タンポは湿度、温度、気圧等の影響で常に膨張・収縮・変形を繰り返している。
わずかではあるが、常にタンポは動いており、完全な密閉と均一なタッチは不可能だった。
これを可能にしたのがストロビンガー・パッドだった。
70年代から研究を始め、おそらく90年代前半には完成していたのかもしれない。勉強不足の私が知ったのは94年頃だったと思う。
パウエルやブランネン、バーカートといったアメリカを代表するメーカーがこぞってこのインディアナポリスのフルートリペアマンであるストロビンガーの開発したタンポを採用した。ゴールウェイの吹くムラマツのプラチナのフルートもタンポはこれに替えてあった。

ここにストロビンガー自身の紹介文と彼のホームページStraubinger Fluteをリンクしたので図や詳細はこちらを見ていただきたい。

このタンポは日本ではすぐには普及しなかった。
伝統的な製法のタンポに対して、複雑でプラスチックの枠に入った堅めのパッドは奏者もさることながら、多くのリペアマンにとって狂わないとは言っても万一狂った場合、調整法が解らなかったのかもしれない。
しかし、明らかに平面性と安定感からもたらされるクリアでシャープなレスポンスと軽やかなタッチはアバンギャルドな奏者を中心に確実に広まってきたと思う。

今回、ムラマツがタンポを改良したことで日本でもタンポ変更ブームが起こることは確実だ。
既に、ミヤザワはストロビンガーで応戦の構えである。ヤマハはいつもの歯の浮くようなキャッチコピーを考え中だろう。

個人的には、ムラマツのタンポは機能的にはすばらしいと思う。日本もがんばっている。
ムラマツのパッドは密閉性と安定性、コストではストロビンガーをしのぐが、デザインとタッチ感でストロビンガーに及ばない。
ストロビンガーのカッチリしたタッチに比べると、ちょっとだけゴム質な感じになる。
とはいえどちらも伝統的なパッドよりずいぶん良くなったと思う。戦いはこれからかもしれない。
ひょっとしたら旭化成のような新素材にずば抜けたノウハウを持つ会社が本気になると、あっと驚く単一素材の完璧なパッドを作れるのかもしれないが・・・

1999.11.08