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タンポの話(ムラマツの改良

 

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改めて言うまでもなくフルートにとってタンポは重要なパーツだ。
しかしながら、紙とフェルトとフィッシュスキン(実際は羊腸で作られている)という天然素材で、100年以上も変わらないパーツなんて他にあるだろうか?
この科学文明の発達した20世紀も終わろうとしている今、遅ればせながら、やっと変革期に入ったのかもしれない。

そもそもタンポの果たす役割を考えてみよう。
なんと言ってもトーンホールを密閉することが第一だ。もう一つ、支持具という役目も忘れてはならない。7本の指はタンポでフルートを支えていることになる。タンポに求められる要素としては密閉性のみならず振動を吸収しない点も重要だ。単に密閉性のみを考えるなら、ゴムなどはよい材質だが、管の振動を止めてしまうのは明らかだ。
そのほかにもタッチ感が重要だ。個人的に堅めのタンポの方が好きだ。ある程度のショックがあった方が指が疲れないような気がする。パソコンのキーボードも、オフィスでブラインドタッチをすることがステータスだった時代はカチカチとしっかりクリック感があるキーボードが多かったが、今はゴム接点を使った音のしないキーボードが大勢を閉めている。(これだけパソコンが普及した現代では昔の大きなキーボードだとオフィスがうるさくてしょうがないかもしれないが)
キーボードも個人的には昔のカチカチの方が疲れないような気がする。舗装された路面を歩くより砂浜を歩く方が疲れるのと同じだろう。

ご存じの方も多いと思うが、9月からムラマツは全機種に新しく開発したタンポに変更した。このタンポはフィッシュスキン以外は一切天然素材を使用していない。企業秘密でもあるので何が使われているのかは公表できないが、豊胸手術に使うあれとランドセルで使われているあれとだけいっておこう。これらをフィッシュスキンでくるんでブリキ缶に入れた、とでも表現すると当たっているかもしれないが、確かに格段に密閉性が良くなったので、低音域でもレスポンスが良くなった。音も心なしかライトでスピード感がでたと思う。
タンポの平面性が格段に良くなったため製作側からすると、タンポあわせが格段に楽で、薄いシムを入れて高さを合わせるなんて面倒なことが無くなったから、タンポあわせの職人を減らすことができ、結果的に合理化されたことだろう。
保守派代表のメーカーであるムラマツがこの改良を行ったからには他のメーカーも黙ってはいないだろう。ここ2〜3年のうちにおしなべてモダンなタンポに変わりましたというコマーシャルをすると思う。

1999.11.07