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私もいつかはデフュレーヌのように

 

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フェルナン・デフュレーヌをご存じだろうか?
モイーズとランパルの間の世代のフランスの名手だが、早くに引退したことと、オーケストラ活動がメインだったこと、謙虚で欲がなかったといわれるが、そのためすばらしい演奏家であるにもかかわらず、あまり知られない名手となってしまった。

誰だったか忘れたが、ある有名な名手が、「いつかはデフュレーヌのように演奏したい」と語った話を聞いたことがある。

ランパルやモイーズとは全く違った気品のある実に美しい音色と、どのような困難なフレーズでも破綻することのない完璧なソノリテとテクニックの融合を聞かせてくれる。
そこにはエンターテイメントも華麗さもないが、真摯な音楽がある。
CDでもこうなのだから、きっと生演奏はどんなにかすごかったことだろう。

「山野楽器は偉い!」、よその楽器店を誉めてどうなることかと思うが、数少ないデフュレーヌの演奏を集めた2枚組のCDを作ってくれた。
特に「牧神の午後」と「ジョリベの協奏曲」の演奏はたとえようもなくすばらしく、前者はすばらしくノーブルで美しく、なおかつ幻想に満ちた音と音楽を聴かせてくれるし、後者は、「何だこれだったら誰でも演奏できるぐらい簡単な協奏曲だな」と思わせるような演奏だ。本当はどれぐらい難しいか、去年の日本音楽コンクールに出た人ならよーくわかっているだろう(^_^;

反論する方もおられるだろう。
確かに、あまりにも上手いため、【演奏困難さを克服せんがための集中力と情熱からくる鬼神的な迫力】といった世界とは縁遠い。確かに迫力は表には出てこない。しかし、その演奏の中に、実は情熱もロマンも、また幻想も美しく昇華されていることを、何度も聞いてみると実感してしまう。ぜひ、聞いたことのない方はこのCDを聞いていただきたい。
そこにはフルートの理想の一つが実現されていると思う。

私には絶対にあんな演奏は夢の中でもできないが、それでも、私もいつかはデフュレーヌのように演奏してみたい。

1999.09.02