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あなたも作れる反射板

 

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いつも商売抜きの話をしているが、今回はいよいよ文句を言われるかもしれない。
ドキドキダイジョウブカナ(゚゚)(。。)

ブレザーのボタンをちょっといいものに付け替えるだけで、ずっと高級なブレザーになったような気がする。
遠目で見ると、生地の光沢や、仕立ての善し悪しで出るドレープの美しさの差でごまかせないのだが、とりあえず自分自身ではその差が自覚できて自信につながる。これはこれでいいことだ。
まずはこのように述べて逃げておき、これから述べることが個人の満足を否定するものでないことを明言しておきたい。
また、これは特に私個人の私見であり、会社の姿勢や一般論では決してないことも申し添えます。

フルートのパーツの中で最も簡単な構造のものがヘッドジョイントの反射板だ。丸い板にねじが切ってある棒をロウ付けしただけのものだ。
最近はこの反射板にいろいろな形や材料を使っていろいろなタイプが出回り、選択のバリエーションを広げている。反射板を替えると劇的に音が良くなると曰う製作家がいるようだが、私は懐疑的だ。
そもそも楽器というものは、どこをいじってもそれなりに音が変わるものだ。私の知っているバイオリンの製作家は表面版のF字穴の切れ込み角度で全く音色が変わるといっていたし、クラリネットやサクソフォンではリードの締め金ひとつで相当に音が変わる。ただリードをマウスピースに押さえつけるだけの道具なのにである。
反射板を変えればそれなりに少々は音が変わるだろう。だとしてもその差は頭部管の下4分の1あたり(たいていはメーカーのマークが刻印されている)にビニールテープを2〜3回巻き付けたときとそう変わらない程度はないだろうか。
パウエルも一時、反射板を変更したときがあったが、今は普通のものになっている。異形反射板ユーザーは特に地方に多いという噂もある。(某メーカーからの情報)

さて、この異形反射板には、石物、金物、木物、樹脂物といろいろなマテリアルと、丸形、ゴルフボールのようなディンプル型、帽子型、同心円形、コニカル型などの形がある。普通のユーザーにとってはこれらの反射板を作るのは難しいことと思うかもしれないが、はっきり言って私たちのようなリペアが出来る者にとっては実に簡単なことだ。
丸い反射板の部分は、金物だったら旋盤さえ扱えれば誰でも削り出すことが出来る。前回述べたキーカップを削り出すことと比べれば、遙かに易しい実習課題でしかない。あとはネジの付いている棒を垂直にロウ付けするだけだから、これを読んでいるあなたも、横で指導を受けながら作業をすれば3回目ぐらいのチャレンジでオリジナル反射板を作れるかもしれない。特別な金属でなければ材料費はカップヌードル3個分ぐらいだ。
石で作るとなるとちょっと難しいと思うかもしれないが・・・
当社は楽器とは別にジュエリーの製造販売事業部がある。こんな事業部のある会社だからお金さえ出してもらえばそれこそルビーやサファイア、ダイアモンドのものだって作れる。形状はもちろんカットの面数のご指定も引き受けられるはずだ。
それなのにオリジナルを作る気がないのは、音色を左右する最大のファクターはやはり頭部管のカットが最大であり、そのカットの個性をストレートに癖無く表出するのはやはり何の変哲もない反射板だと思うからだ。
第一、反射板を100個売ったとしても、豪華な宝石製でもない限り、スタッフが温泉にいくほども儲からない。好きでいろいろこだわって作っている製作者に任せた方が賢明だろう。
しかし、過剰な期待を抱かせるコマーシャルもあるので、自分にとってどれほどの意味を持つかは一考すべきではなかろうか。

ちなみに当店ではこれらを、たのまれれば取り寄せますが在庫や製作はしていません。
もし高価な宝石でどうしても作りたいというお客様がいらっしゃれば製作いたしますが、結果としての音色についての責任と返品交換はご勘弁願います。

(この章は先日反射板の在庫がないことをバカにして帰った生意気な音大受験生に捧げます)くやしー!(ToT)↑

1999.06.17

 

19990617