メシアンの黒つぐみ(クロウタドリと訳すのが正しいが)は私の好きな現代音楽だ。
スタイルは現代音楽だが、技術的にはピアノも含めてそれほど難しくないし、とてもロマンティックなところがあり、何より、私にはとても写実的な音楽に聞こえる。
なぜ写実的かというと、ヴィヴァルディの時代から、作曲家は何かを表すのに旋律を用いて比喩してきた。
ところがこの曲では、と言うかメシアンは鳥の鳴き声ならその鳴き声そのものをダイレクトに楽譜化してしまっている。「鳥のカタログ」なんて曲は鳥類学者だったメシアンならではの鳥類図鑑である。
さらに感心するのは「静まり返った深い森」や「かすかに感じる風の感触」をハーモニーやピアノのペダルを使って表現している。特に「しーんと静まり返った」の「しーん」という無音を、ピアノのコードで表現することに成功しているところは天才としか言いようがない。
この曲を演奏する度に、深い静まり返った森の中で鳴く鳥になった気持ちになってしまう。
後半のちょっと難しいところは、さしずめ2羽の鳥が情交しているような部分だ。
だんだんとエスカレートしていくが、最後のところで、その行為を人間に見つかって一瞬固まったかと思うと、ぱっと森の中へ飛び去っていくようなイメージだ。
そんなところがとても画期的な写実音楽に感じる。
1999.02.12